油絵2

■カンバス

 木枠に、下塗りした麻布を張ったものをカンバスと言います。下の表をご覧いただければお分かりのように、0号から500号まで大小さまざまなサイズがあります。単位センチ。

Fとは人物サイズ。人物画に適した縦横比となっています。

Pとは風景サイズ。風景画に適した縦横比となっています。

Mとは海景サイズ。海の景色に適した縦横比となっています。

 しかしMサイズのカンバスに人物画を描いてもかまいませんし、Fサイズのカンバスに風景を描いてもかまいません。自分が描きたい作品に合った縦横比のカンバスに、絵を描けばよいのです。ここで付け加えて覚えておきたいのは価格です。Mサイズの面積が小さいからといって、Fサイズより値段が安いとは限りません。といいますのは、Fサイズは比較的市場に出回っているために、量産効果が効いて低価格になっています。

■筆、筆洗、額縁など

 

 油絵用には豚毛筆が主に使われます。硬い油絵具を硬い豚毛筆で描くとスムーズに制作が運びます。価格も比較的安価です。馬毛やセーブルなどの動物毛は、柔らかく腰があって、仕上げ用に最適です。画用液をたっぷり使って描く時に便利です。価格は高めです。

 初めての方が用意するのは、セットに入っている白い豚毛筆に加えて、リセーブルのサイン書き用筆です。毛皮で有名なセーブルは、その毛が筆として加工されても相変わらず高価で、油絵のような筆が傷みやすい絵具にはもったいないとのことで、ポリエステルなどの素材で代用としてリセーブル筆が作られました。

 【セーブル】と【リセーブル】では、【リ】が付くか付かないかで値段のゼロが一つ違います。

 

 筆洗はセットに付いてくるので、始めのうちは購入不要でしょう。油絵に慣れてきたら筆洗器を購入しましょう。金属製のフタの付いた筆洗器がお勧めです。フタが付いていれば筆洗液が蒸発しません。筆洗器の穴々の少し下まで水を張り、その上に筆洗液を注ぎます。穴々の下の水の層に絵具カスが沈殿します。全部一杯に筆洗液を入れる人がいますが、もったいないことだと思います。どうせ穴々の向こうには筆の穂先が届かないのですから、この方が節約出来るというものでしょう。

 

 パレットはセット付属の折りたたみ式のものでもいいのですが、油絵に慣れてきたら白色のパレットを使ってみましょう。白色だと各色が偏りなく認知できる利点があります。

 

 油絵セットに付属しているナイフをパレットナイフと言います。バターを塗り付けるような形をしています。メーカーによってはパレットナイフの代わりにペインティングナイフをセットに入れているとこもあります。両者ともパレット上の絵具を削ぎ落としたり、絵具同士を混色する時に使います。ペインティングナイフは本来絵を描くためのナイフでしたが、パレットナイフがあまりにも使いにくいので、最近ではこれが代用されることが多いのです。

 

 シッカチフという乾燥剤があります。液状かチューブ入りで市販されています。水彩絵具は蒸発乾燥ですが、油絵具は酸化乾燥です。酸化乾燥の速度は気温に左右されます。夏場は速く(数日)、冬場は遅く(一週間以上)乾燥します。絵具によって、たとえばジンクホワイトなどは乾燥が遅いため、厚塗りしてから一週間後に重ね塗りしようと思って触ってみると、まだ生き生きしていて、驚くことがあります。こんな時に重宝なのがシッカチフです。ペインティングオイルの入った油壺に液状のシッカチフを数的たらして制作します。シッカチフは乾燥速度の異なった絵具同士を同じ乾燥速度に調整するためにも使われます。

 

 油壺は横から見ると菱形のソロバン珠型をしています。なぜかというと、少し横に傾けても流れ出さないように工夫されているからです。パレットの指穴に親指を入れて片手で持ちながら制作しているとパレット全体が傾くことがあります。こんな時に、油が流れ出して服に付いてしまっては大変でしょう。

 

 出来上がったあなたの自信作を額縁に入れてみましょう。「馬子にも衣装」ではありませんが、額縁には中の絵をうまく見せる不思議な魔力があります。油絵の額縁は、カンバスをそのままスッポリ入れれば収まるように出来ています。カンバスの項でも述べましたが、同じ8号サイズの額縁でも、FサイズとPサイズでは、Pサイズの方が小さいのですが、額縁の値段はFサイズよりPサイズやMサイズの方が高めです。時には「PとMは受注生産です」と店の人に言われてショックを受けることもあります。

 油絵の道具は何故こんなにたくさんあって、使い方も面倒なのだろう?水彩ならば簡単ではないか?思われる方も多いと思います。理由は、油絵というのは制作技術が水彩に比べて楽だから、なのです。油絵は濡れていても乾燥していても色が変化しません。  油絵は乾燥した上から重ねて修正することが出来ます。そこへいくと水彩は、たとえば黒く塗った上に白を重ねることが困難でしょう。水彩は乾くと白っぽくなってしまいます。濡れ色と乾き色の変化を認識する必要があります。ちなみにアクリル絵具は、乾くと色調が暗く変化します。 

 道具の扱いが面倒ならば技法が簡単で、道具の扱いが楽ならば技法が難しいというように、なかなか両立しにくいものです。