額縁

額縁には窓の機能に加えて「仕切る」機能も持っています。

「仕切る」とは何かといいますと、外界と内界を区切ることです。外界と内界(俗界と彼岸)を分ける結界のような役割を果たします。

絵の中は聖なる空間です。

 

額縁の色には金色が多いですが、どうして金色なのでしょうか?

金色は自然界に存在しない色です。自然界に存在しないということが、結界の役割をします。

そして自然界に無い色だからこそ絵の邪魔になりません。

もし額縁なしで絵を飾ると、どうなるでしょうか(下図)。

左右を比較してみると、左の方が貧弱に見えてきませんか?

裸で生活する人みたいです。あるいは窓やドアの無い開けっ放しの住宅みたいな感じがします。

額縁には、気持を切り替えて、改まった心でケジメをつける結界のような役割があることが分かります。

 

絵は本来神聖なもので、絵に対峙する時には身を清めるぐらいの心構えが必要でした。今ではそこまでする人は居ませんが、掛け軸が床の間に掛けてあるのは、その名残りと言えます。あるいは展覧会に正装で出かけることも同様です。

 

絵に限らず、たとえばクラシックのコンサートの服装や、結婚式、葬式、裁判所、国会などなど、あらたまった気持を必要とする時には、それなりの服装や心構えで臨みます。これらの場所に普段着で出かけてしまったら、恥ずかしくて顔から火が出る思いをすることでしょう。

 

額縁が大切なことは分かりましたが、世の中にはこれを逆手にとって、額縁ばかりに気をつかう人も居ます。

私は昔ある人の個展に行ったことがあります。素晴らしい会場で、素敵な服を着ていて、立派な額縁で、品の良い飾り付け方で、受付嬢が美人で、芳名帳に書 かれている人たちの肩書が立派で、ステキなクラシック音楽が流れていて、完璧な個展でした。

額縁の中の絵を除いて。

やはり鑑賞者は中身の絵を見るものです。

額縁を人間に例えれば「服」とか「ファッション」のようなものだと思います。

 

油絵用の額縁は厚みがあります。描いた作品をカンバスごとスッポリ入れるような構造になっています。

カンバスの厚さが2センチありますので、合計10センチもある厚さの額縁となります。

ワニスが画面保護の役割をするので、原則として油絵用の額縁にはガラスを入れません。

水彩画や版画用の額縁は厚さが2センチ程度です。戸建、マンションなど、現代日本人の住居によく調和します。額とガラスの間に「マット」と呼ばれる、くり抜いた厚いボール紙を入れて作品とガラスを密着させないようにします。