デッサンについて

前半はファインアートの視点から考えてみました。

 

デッサンは絵画教室の主要教材ですが、皆さんが思っておられるほど基礎的なものではありません。デッサン以外の要素---主題、動機、様式、感動、構成、色彩の配分、色彩の強弱、明暗、音楽性、文学性などなど、デッサン同様に重要な要素がたくさんあります。

 

鉛筆画とデッサンを混同している人がいます。

私は、デッサンとは、物の輪郭を鉛筆でなぞって形を正確に写し取ることだと考えています。つまり線画です。

形を写し取ったそこから先は、鉛筆画や絵具の領域です。

 

デッサンには知性が出ます。

幼児や認知症を患った方や薬物中毒の人は、正しいデッサンを描くことが出来ません。

絵の中のデッサンは、知性と教養ある大人が描いたように見えれば十分だと思います。それ以上の正確さは趣味の領域です。

 

正確すぎるデッサンは、表現をその中に封じ込めてしまいます。

絵ではなく漫画の世界ですが、デッサンが正確になればなるほど漫画がつまらなくなります。絵においても同様だと思います。

ゆえに正確過ぎるデッサンは美術ではなくて科学です。

 

美術史の中で、正確なデッサンを軽視した名画があるのをご存じでしょうか。そう言われてパッと浮かぶのがアンリ・ルソーです。

ではそれ以外はほとんど無いと思いますか?

 

いやいや、たとえば浮世絵などの明治以前の日本絵画は正確なデッサンではありません。中世の絵画やイコンも同じです。抽象絵画はデッサンを無視しています。

 

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絵画教室からのメッセージ

ファインアートでは、

◆デッサンは知性と教養ある大人が描いたように見えれば良い。

◆彼女や わが子の顔を似せて描くことができるぐらいにまで、勉強することをお勧めします。

◆デッサンをしながら物の形や構造や前後関係などを脳内にインプットしましょう。脳内ハードディスクに記憶して、別の絵を描く時に応用します。多岐にわたる多様なデッサン経験が多ければ、脳内情報量も多くなって、やがて想像力や独創力が上がります。

◆デッサンが上達すると、面白くなってやりまくります。それはそれで結構ですが、ほどほどで切り上げましょう。世に言う”デッサンの神様”は絵がヘタな人が多いので。ですからその現象を防ぐために、ある程度上達してきたら、絵具によるフルカラーデッサンをお勧めします。

 

絵画教室にはファインアート志向だけではなく、細密イラストレーションを目指す方もいます。そのような方には「正確なデッサンを描きましょう」と指導しています。

加えて受験のために入試で鉛筆画(時には木炭画)を要求される場合がたくさんあります。そのような方にも、もちろん「徹底的に正確に描きましょう」と指導しています。

 

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「デッサンは絵の仕上げ」(アルマン・ドゥルーアン)

フランス人の美術評論家がこう言いました。

デッサンしてから色を塗って云々は逆で、色を感じて考えてから絵を進めて、最後にデッサンで形を整える、ということです。

一般に描き始めと終わりが逆に認知されていますが、これは間違いです。

 

始めと終わりを逆転してしまうことから、”絵の下手なデッサンの神様”を生んでしまうことになります。

 

ただし透明水彩画は始めにデッサンをします。

油絵は絵の具を重ねられますが、透明水彩画は絵の具を重ねて修正することが難しい画材です。最初に形をとっておかないと、あとでひどい目に遭います。

ゆえに透明水彩画はタブロー(完成された絵画)ではなく、スケッチ(素材)の位置づけとなります。

 

「デッサンは知的な装飾となりやすい」(アルマン・ドゥルーアン)

ここまで言っています。

”装飾的な絵は時代を制する”ですから。

ファッション、髪型、学歴、経歴、富などは装飾的要素が強いので、たしかに時代を制してますね。

デッサンが上手い人の方が高等教育を受けていて利口そうに見えます。