油絵について

チューブ入り油絵具が市販された印象派時代より以前の油絵具は、画家の工房で画家の弟子が自製していました。

顔料という金属粉に乾性の植物油(亜麻仁油、ケシ油、べに花油)を混ぜてガラス製の棒で根ったものを容器に入れて約一年間保管します。熟成された絵具を使って絵を制作します。

チューブ入り絵具には蝋や体質顔料などのさまざまな添加物が加わって、あのように硬い絵具となっています。ですから昔の油絵具は柔らかかったのです。柔らかい絵具と硬い絵具では出来上がった絵の雰囲気が変わります。柔らかい絵具では写真のような細かい描き込みができます。比べて硬い絵具では繊細な描き込みよりも厚塗りが容易です。私たちは【油絵】というと、厚塗りのごってりした絵を想い浮かべますが、本来は薄くて繊細なものでした。薄くて繊細な絵具によって写真のような絵を描くことが出来ました。ところが前述(絵と写真)しましたように、時代が変わってしまいました。画家業は写真の発明と普及によって衰退しました。

 

そこで油絵具はチューブ入り絵具として生まれ変わりました。

私は個人的には古いタイプの油絵具によって描かれた絵の方が好きですが、今日、昔のような顔料と油だけで構成された絵具は メーカーから発売されていませんので、当時の絵具を使って繊細な絵を制作したい人は自製するしかありません。

 

油絵具は不透明な性質があって技法的に修正可能なので、絵を習いたい人の入門用に適しています。しかし油絵具は奥が深くて、別の意味でこれほど厄介な絵具もありません。うるさいことを言うと(完璧に変色させないで保管するには)、一工程が済んだら次に絵具を重ねるまでに最低2週間、厚塗りでは1年も間隔をあけなければなりません。そうしないと耐久性に問題が出てきます。

「始め薄く後から厚く」を守る必要があります。

 

完成された絵を保存するには、直射日光に晒し続けてはいけませんが、もっと大切なのは暗闇に保管してはいけない、ということです。光が全く不足すると、絵具の顔料は変化しませんが、練ってある油の方が変質してしまいます。とくに厚塗りの油絵でこれをやると数十年で黄ばんだ絵になってしまいます。

図は左から、ヤーコブ・マレル「ヴァニタス」1637年、梅原龍三郎「天地鐘秀」、安井曽太郎「金蓉」。

 

技法的な難しさよりももっと重要なことがあります。それは西洋の絵具を東洋人が使うと、自国の伝統を生かしにくいということです。国籍不明な絵画になります。

逆に西洋人が日本画を描いても同様です。外人が和服を着るようなものです。

 

明治時代以降、文明と伝統をいかに融合させて新しい日本の絵画を創造するか、ということが絵画制作者の大きな課題となりました。

やがて梅原龍三郎、安井曽太郎などの洋画家たちは、和洋融合の問題解決に優れた業績を残しました。

特に安井曽太郎は「安井様式」を開発して多くの画家に影響を与えました。「一水会」、「光風会」などの日展系の美術団体は、かつてほとんど安井様式によって描かれた絵で占められていました。